猫の代表的な心疾患
肥大型心筋症 ( HCM ; Hypertropied Cardiomyopathy )
猫の心疾患として、臨床的に最も多く遭遇します。
左心室心筋が内側に向かって厚くなることが特徴です。
心臓自体の大きさの変化は少なく、臨床徴候も乏しいため、通常の健康診断では発見が困難です。
心筋肥大の場所により、『通常の肥大型心筋症』と『閉塞性肥大型心筋症( HOCM )』に分類されます。
また、肥大型心筋症の中には、厚くなった心筋が徐々に疲弊し、心臓拡大や収縮力低下を起こすこともあります。拡張型心筋症に類似した病態を辿るため、『肥大型心筋症の拡張相』と呼ばれています。
原因
一部の品種では遺伝であることが発見されています。ただし、日常的に遭遇するのはミックス種であることが多く、
疾病発生の原因について遺伝的な可能性が推測されていますが、多くは明らかになっていません。
好発猫種、発生年齢、雌雄差など
メインクーン(常染色体優性遺伝)
アメリカン・ショートヘア、ラグドール(遺伝性:家族内発生)
ペルシャ、ブリティッシュ・ショートヘア、スコティッシュ・フォールドなど
HCMの約8割はオス猫に認められ、平均発症年齢は5~7歳です。
しかし、実際の発症年齢は3ヶ月齢~17歳と幅が広く、メインクーンでは
幼若齢での発生報告が多いようです。
臨床徴候
初期は無徴候です。病状が進行すると、頻脈、食欲減退、活力低下、呼吸困難などを認めることもあります。
病態の進行に伴い、不整脈などが発生すると失神や突然死を起こすこともあります。
【 動脈血栓塞栓症 】
HCMの16~18%に発生すると報告されています。 血栓が詰まる場所により、前肢や後肢の麻痺・痛み、内臓の梗塞などが起こります。 脳梗塞を伴う場合、失神や突然死を起こすこともあります。
治療
【 通常のHCM 】
心筋の拡張力を高め、心拍出量を増やし、心拍数を正常レベルまで低下させるため、
カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬などを用います。
【 閉塞性HCM ( HOCM ) 】
カルシウムチャネル遮断薬は禁忌とされ、ベータ遮断薬を主に使用します。
【 拡張相HCM 】
弱まった収縮力を増強させるため、上記の2剤を用いずに強心薬を使用します。
それぞれの病態により利尿薬、血管拡張薬などを用いることもあります。
超音波検査による病型の特定が非常に重要です。
![]() HCM による胸水 |
![]() HCM による肺水腫 |
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犬猫の先天性心疾患の代表例
動脈管開存症 ( PDA ; Patent Ductus Arteriosus )
胎子期に肺動脈と大動脈を繋ぐ動脈管が、出生後も残ってしまっている病気です。
左心室を出発した血流の一部が大動脈→動脈管→肺動脈→肺→左心系へと還流するため、左心系が常に血液量過多となります。
発見が早ければ、外科手術による完治が可能です。手術の方法としてコイル塞栓術、開胸下での血管結紮術の2種類があります。
![]() 正面像 |
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大動脈狭窄症 (AS ; Aortic Stenosis )
大動脈の一部が狭くなるため、血液が左心室から上手く全身に送り出せなくなります。大動脈弁の位置を基準とし、
血管が狭くなる部位によって、弁下部、弁部、弁上部に分類され、イヌでは弁下部狭窄症が最も多いとされています。
大型犬で発見されることが多い病気ですが、時折、小型・中型犬での発生も見られます。
通常はお薬の服用による内科的治療が選択されます。動きが鈍い、疲れ易いなどが認められ、失神することもあります。
発見の遅れや、病態進行により重症化すると突然死を起こすことも報告されています。
![]() 正面像 |
![]() 側面像 |
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肺動脈狭窄症 ( PS ; Pulmonary Stenosis )
肺動脈の一部が狭くなり、右心室から肺への血液循環が低下する病気です。
大動脈狭窄症と同様に肺動脈弁の位置を基準とし、狭くなる部位によって弁下部、弁部、弁上部に分かれます。
弁部での狭窄症の発生が最も多く報告されています。重症度に応じて治療を選択します。
一般的に、軽度~中程度のものは内科的管理、それ以上のものは二次診療施設での外科手術が適用されます。
心室中隔欠損症 ( VSD ; Ventricular Septal Defect )
右心室と左心室とを隔てる心室中隔の形成が不十分で、両室間に孔が開いている状態です。
孔が小さければ自然に閉じることもありますが、そうでない場合は状況に応じて治療が必要となります。
病状にもよりますが、内科的治療、二次診療施設での外科手術と言った選択が可能です。
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